米アカデミー賞ノミネート!国際的にも評価されている人気アニメ!
子どもには無限の可能性があり、社会を支えていく次の世代です。
社会の最小単位である家族は、昔から多くの作品で取り上げてきました。
未来のミライでは、待望の我が子を授かった家庭を舞台とした、小さな大冒険を見られます。
新しい家族のイメージを描きたいという監督の思いは、これまでにないエンターテインメントを完成させました。
現代の家族の在り方を問うアニメ映画
家族が気兼ねなく暮らせる庭付きの戸建て、これは昭和の時代からの共通の夢です。
しかし、親の言うことに従っていれば間違いがないという従来の法則が崩れた現代社会では、親子の関係が大きく変化しました。
もはや人生の過ごし方に正解はなく、親のアドバイスが役に立たないケースすら珍しくありません。
家族の関係がどうあるべきかを語るには、前の世代の家族についても振り返る必要があるでしょう。
未来を知るためには、過去から考えていくことが大切です。
未来のミライでは、長男のくんちゃんが新しく家族に加わった妹のミライちゃんとの関係に戸惑います。
これまで独占していた両親の愛情が奪われたというショックは、くんちゃんの自立への第一歩です。
くんちゃんが家族って何だろうと素朴な疑問を抱いた時に、自宅の庭で自分のことを兄と呼ぶ、不思議と親近感を持てる雰囲気の少女と出会います。
そして、その妹と同じ名前である少女と一緒に、くんちゃんは時空を超えた冒険に旅立つのです。
わざわざ未来から兄を訪ねてきた妹
まだ幼いくんちゃんを「お兄ちゃん!」と呼ぶ少女は、未来からやってきたミライでした。
セーラー服を着たミライちゃんは、妹であるにもかかわらず、兄のくんちゃんよりも明らかに年上です。
なぜ、未来から妹のミライが訪ねてきたのか?
その謎を解き明かすために、くんちゃんは自分の家族にまつわる物語を辿っていきます。
過去に遡ると両親はまだ幼く、さらに昔には若い頃のご先祖さまとも出会えます。
誰しも赤ん坊から年月を重ねて大人になっているという、当たり前ではあるものの忘れがちな真実です。
男女が出会い、愛し合うことを社会的に承認されて家族になります。
未来のミライにおける社会情勢を反映した街並みと価値観の違いは、現代に生きるくんちゃんにとってはまさにカルチャーショックの連続です。
家族の愛には色々な形があり、そのどれもが尊重されるべきものとなります。
くんちゃんが自分なりに結論を出し、未来からのミライちゃんの真意が分かることで、物語はフィナーレへと加速していきます。
実力と実績を兼ね備えた監督による最新作
未来のミライの監督は、アニメーターとしても豊富な実績がある細田守氏です。
学生時代からアニメーションに強い関心があり、自主制作のアニメを通して業界へ入りました。
アニメ制作の工程として、実際に絵を描く動画、元になるラインを決める原画、全体の流れを説明する絵コンテと、一通りの下積みをしてきたキャリアがあります。
最終的には作品をいかに盛り上げるのかを考える演出家から総責任者である監督へと昇進して、数々の賞を獲得した「時をかける少女」などの様々な名作を手掛けています。
細田守監督は日本が豊かになっていく移り変わりを実際に体験してきた世代の1人として、エンターテインメントの手法で新たな家族の絆を描くために未来のミライを作りました。
もう親というだけで偉そうにできる時代ではないものの、だからといって未熟な子どもだけでは生きていけません。
現代の家族が納得できる人の生き様、家族の在り方を丁寧に描いた大作が、未来のミライです。
相互扶助である家族の絆を再確認してみよう
昭和の時代までは、親は絶対的な権力者でした。
特に家長である父親に口答えするなどもっての外で、その指示がどうであろうとも、子どもはただ親の言うことに従っていたのです。
現代の家族像からすれば信じられない話ですが、その時代には親が全責任を負うことで成り立っていました。
日本で子どもの意思が尊重される風潮になったのは、昭和の高度経済成長期からです。
大家族から夫婦と子どもだけの核家族になり、親が自分の判断だけで子どもの教育方針を決めるスタイルに変化しました。
子どもを育てるのなら庭がある一戸建てというイメージすら、現代では薄れつつあります。
未来のミライで監督が描きたかったのは、どこにでもある普通の家庭です。
価値観が多様化して、家族としての共通項が少なくなってきたけれども、いざとなれば親が子どもを助けて、ゆくゆくはその逆に成長した子どもが親を支えていくのが家族です。
幼児のくんちゃんと少女のミライちゃんの視点で見ていく物語では、誰のために家族があるのかを再確認できます。
過去から未来へとつなげられるバトン
自分の家庭を持ち、待望の子どもができたら、代々伝えられてきた技術などを継承させます。
親の価値観は子どもに大きな影響を与えるので、教えずとも自然に真似をして、医師の子どもであれば同じように医師を目指すといった結果になるのです。
別に伝えるべき特別なことがなくても、やはり親の言動は子どもの成育に色々な影響を及ぼします。
親子がよく似ているのは、同じ空間で同じ時間を過ごしているからです。
家族としての親はさらに前の世代から様々な因子を引き継いでおり、時代によっては歴史の教科書に載っている戦争や事変にも関わっています。
未来のミライで描かれる普通の家庭でも、その背景には家族同士で助け合い、次の世代へとつなげてきたバトンがあるのです。
アニメ映画の表現技法による幻想的な雰囲気も交えながら、まだ先入観がない子どもの立場で過去から未来へのバトンの存在を振り返れます。
導入部分で未来からのミライちゃんという大きな引き込みがあるので、テンポ良く進みます。
共通の固定観念がなくなった、個人の意思が尊重される現代においては、最も近い立場にいる家族の愛が問われています。
未来のミライは子どもを主役としたアニメ映画であり、家族全員が楽しめる作品です。
どんな人にも背負ってきた歴史があるという事実を改めて確認すれば、きっと今後のより良き家族としての日々にもつながります。